以前、企業型DCや企業型BC、そしてiDeCoに関する記事を書いてきました。
今回は、それらの制度が2022年に大きな転換期を迎えるということで、その内容について簡単に解説していきます。
まだ1年以上の先の話にはなってしまいますが、企業型DCのある会社にお勤めの方のお役に立てればと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
2022年改正内容
①2022年5月 iDeCoの積立可能年齢が延長
2020年11月現在は60歳未満が対象のiDeCoですが、国民年金被保険者(20歳以上※)であれば65歳までiDeCoに加入できるようになります。
※2022年の成人年齢18歳引き下げ後も、国民年金被保険者の年齢要件は20歳以上のようです。
(法務省:パンフレットより)
②①に合わせ、2022年4月からiDeCoの受給開始の上限年齢も70歳から75歳に引き上げられ、60歳から75歳までの間を選択できるようになります。
③2022年10月から企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者のiDeCoの加入要件が緩和
現在は、企業型DCが導入されている場合には、企業型DCの規約によりiDeCoの併用が認められている場合のみ、iDeCoへの加入が可能になっています。
このルールがあることでiDeCoを活用できない人が多かったことから、2022年10月1日より企業型DCに加入している人でも、全員が原則としてiDeCoに加入できるようになります。
今後のルールとして
A:企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が55,000円以内であること
B:企業型DC加入者でマッチング拠出(加入者追加掛金)をしていないこと
※マッチング拠出可能でもしていない加入者はiDeCo併用可能
この2つの条件を満たせば、原則全員がiDeCoに加入できるようになります。
企業型DCとiDeCo併用のポイント
【iDeCoの掛金上限金額】
企業型DCのある会社員がiDeCoに同時加入したとして、掛け金の上限がいくらになるのか?
前提ルールは、iDeCoの上限以下(月2.3万円)で、かつ企業型DCの会社掛金の合計が、
企業型DCだけの場合5.5万円未満
企業型DC+企業型BCの場合は2.75万円未満
であればiDeCo併用がOKです。
企業型DCが導入されている会社に勤めている人の場合、iDeCoの上限は『月2万円』です。
企業型DCに加えて、確定給付企業年金(企業BC)が導入されていると、『月1.2万円』です。
なので、企業型DCだけが導入されている会社に勤めていて、会社掛金が月額1万円の場合にはiDeCoは月額2万円までとなります。
また同様の会社で、企業型DCの会社掛金が4万円の場合は、月額の上限は5.5万円が適用されるので、同時加入するiDeCoの上限は1.5万円までとなります。
マッチング拠出がいいのか?iDeCo併用がいいのか?
企業型DCではマッチング拠出を使用していると、iDeCo併用が不可になります。
ただし、マッチング拠出制度があっても使用していない会社員はiDeCo併用が可能です。
では、この2つではどっちを選べばいいのでしょうか?
メリット・デメリットについて解説していきます。
企業型DCでマッチング拠出 | 企業型DC+iDeCo併用 | |
掛金上限額 | 最大で2.75万円 (企業型BCありは1.87万円) 会社掛金以下という制限あり | 最大2万円 (企業型BCありは1.2万円) |
口座管理費用 | 会社負担 | 本人負担 (金融機関で差がある) |
管理口座数 | 1つ | 企業型DCとiDeCoの2つ |
運用商品 | 会社の契約金融機関で 選べる商品に限定 | 運用したい商品がある 金融機関を本人の意思で選択可能 |
会社掛金額 | 本人掛金額 |
5,000円 | 5,000円以下 |
10,000円 | 10,000円以下 |
20,000円 | 20,000円以下 |
27,500円 | 27,500円以下 |
30,000円 | 25,000円以下 |
40,000円 | 15,000円以下 |
50,000円 | 5,000円以下 |
マッチング拠出は会社掛金に追加して、会社員が上乗せするだけですので、企業型DC口座1つだけの管理・運用が可能です。給付手続きも1つで済ませるのも楽ですね。
加えて口座管理費用も一般的には会社が負担するので、費用の面からも基本的にはマッチング拠出の方が良いかもしれません。
もちろん企業型DCの運用商品に全く魅力的なものがない場合は、iDeCo併用が良いかもしれません。
ただ、いくつかの会社の企業型DCのラインナップを見させて頂きましたが、ほとんどの所にMSCIコクサイやMSCI ACWIの商品はあったので、これらで運用したい場合はマッチング拠出があれば選んでもいいかと思います。
もう一つの判断材料は『会社掛金額』ですね!
マッチング拠出には従業員掛金が会社掛金額を超えてはいけないというルールがあるので、会社掛金額が低い場合は、従業員掛金も低くなってしまいます。(表2)
特に若い人ほど会社掛金が小さいことが多いので、マッチング拠出の積立金額が小さくなってしますデメリットがあります。
なので、手間とコストをかけてでも企業型DCとiDeCo併用の方が、より多くの老後資金を貯めることが出来ます。なので、会社掛金が低いうちはiDeCo併用、仮に会社掛金が2万円を超えてくればマッチング拠出に切り替えるなどもありだと思います。
また、企業型BCもある企業では会社掛金が1.2万円を超えるあたりが分岐点ですね。
掘り下げると、iDeCoの口座管理料の負担のデメリットもあるので、年収などによって分岐点は多少前後します。
また、iDeCoと企業型DCはどちらにしても移行して1つにまとめることも出来るので、途中で企業型DCだけにしても大丈夫です。そうすることで、iDeCoの口座管理料を回避することも出来ますね。
もちろん資産を移行する場合は、いったん現金化することになるので、マーケットリスクや時間分散効果を薄めるリスクを負うことにはなることは理解しておきましょう。
選択型DCの場合はどうする?
2015年以降の企業型DCでは、会社掛金なしで社員の給与や賞与の一部を前払退職金と再定義し、その分を企業型DCとして積み立てるか、そのまま給与や賞与として受け取るか従業員が選択できる『選択型DC』という制度が出来ました。
企業型DCの掛金とする場合は、給与や賞与は減額することになり、将来受け取る年金や傷病手当金といった社会保険給付額を減らしてしまうリスクがあります。
企業型DCの掛金とする場合は、給与や賞与は減額することになり、将来受け取る年金や傷病手当金といった社会保険給付額を減らしてしまうリスクがあります(平均標準報酬月額が減るため)
そして選択型DCを使う場合も、iDeCo併用が可能になります。
ただ、iDeCoの同時加入の場合、【会社掛金+本人追加掛金+iDeCo掛金】が企業型DCの上限額を超えてはいけません!(企業型BCなし=5.5万円 企業型BCあり=2.75万円)
多くの場合で企業型DCの上限額まで本人掛金を積み立てられるようなので、あえてiDeCoを併用するメリットは薄いかなと思います。
最後に
今回の法改正により、複雑化する面もありますが、企業型DC加入者の多くがiDeCoも併用できるようになります。
改正の実施までに、自身の勤める企業のマッチング拠出の制度や掛金額などを把握して、どのようにするのがいいのか考えておくことが大切かと思います。
それでは、本日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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